■まやかしの回廊(闇表)■

闇表。
アニメ乃亜編。最初の方で2人っきりで走ってた辺りの話ってことで(^^ゞ















暗い道を2人で走る。
―他には誰もいない。



「ちょっと待って」
遊戯が<遊戯>の服の裾を引っ張った。
長い長い、どこまで続いているのかもわからないこの黒い回廊をすっと走ってきた遊戯の息は荒い。
「ごめん・・・ちょっと歩かせて」
「・・・休むか?」
しかし<遊戯>の提案に遊戯は首を横に振った。
「大丈夫。・・少しでも先に進まないと」
城之内や海馬はビッグ5に挑まれたとしても何の心配も無いだろう。
だが、他の仲間はデュエルに慣れているとは言いがたい。
遊戯の言葉に<遊戯>は頷くと手を取って歩き出した。


手の中に、遊戯の温もり。


「どこまで続くのかな、ここ」
「・・・さあな」
もうずいぶん長いこと走ってきたというのにこの黒い道は終わりを見せない。
「ボク達、ずっと同じとこぐるぐる回ってるだけだったら・・・・」

それもいいかもしれない。
<遊戯>は思う。

コノママズット、フタリキリ―

永遠に。



だが<遊戯>はそれを否定した。
「それはないだろう」

「このまま行けば必ず突破口が見つかるはずだ」
確信に満ちた<遊戯>の言葉に遊戯が疑問符を投げかける。
「乃亜は」
<遊戯>は自分の考えを口に出した。
「海馬にこだわっているようだった。・・・それに『デュエル』での決着を望んでいる」
それはあくまでも<遊戯>の憶測でしかないのだが。
あながち間違ってはいないはずだ。
「そんなことしなくても肉体だけが欲しいのなら他にどうとでも方法はあったはずだ」
「そう言えばそうだよね」
遊戯が同意を示す。
「乃亜もこれをゲームとして楽しんでいる節があるから・・・このまま放っておくとは思えない」
「そうだね、ずっと同じじゃ見ててもつまらないだろうし。何か仕掛けがあるはずだよ」

ズットナジジャツマラナイ。

それは乃亜が、という意味なのだとわかっている。
だが<遊戯>は胸が小さく痛むのを感じた。



コノママズット、フタリキリ―



だが自分に言い聞かすようなその声は別の意味も含んでいるようにも感じられる。
<遊戯>が記憶を取り戻した、その先にある未来。
そして漠然とした不安。
―別れの予感。
「どうしたの」
<遊戯>の様子に遊戯が顔を覗き込む。
「いや」
<遊戯>は曖昧にその視線を避けて誤魔化そうとした。
妙なところで聡い遊戯がおとなしく誤魔化されてくれるとも思えなかったが。
ややあって遊戯が言った。
「・・・ねえ、ボクが最初、キミのこと怖かったの知ってる?」
唐突な問いに<遊戯>は少々面食らう。
「・・・ああ」
まだ遊戯が<遊戯>の存在を知らなかった頃。
時折途切れる記憶が遊戯の不安感を煽っていた。
自分が、自分でないような。
それは当然なのだろうと思う。
<遊戯>は目を伏せた。
「でも今は好きだ」
遊戯の言葉に落としていた視線を上げる。
目の前に、笑顔。
「きっと昨日より今日より、明日のがもっと好きだよ。これってすごいよね」
遊戯の目が<遊戯>を捉える。
「だってズットオナジじゃわかんなかったことだもん」


ズットオナジジャツマラナイ


だから前に進もう。
オナジではなくモットヨクしよう。
何があるかはわからないけど。


すごいのは、お前だ。

<遊戯>は思う。
こういうことをさらりと言ってのけるから―――――敵わない。



「どうしたの」
立ち止まってしまった<遊戯>を遊戯が気遣う。
「大丈夫だ」
<遊戯>は笑って答えた。
それに遊戯も笑顔を返す。
「行こう!」

「突破口を見つけなくちゃ!」


差し出された手は、温かい。

手の中の、遊戯の温もり。
―それがこの世界のまやかしだったとしても。



お前が手を差し伸べてくれるなら
一緒に前に進もう。
昨日より、今日より、明日を選ぼう。



そしていつか
お前に伝えたい。
本当の、自分の言葉で。











END

 







乃亜編。最初の方で2人っきりで走ってた辺りな感じで。
ウチの闇様は基本的に思考が暗いかも(^^ゞ

 

2002.07.05

 

 

 

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