■100万回生きたネコ(闇表)■

闇表。
白いネコを見つけた闇様のお話。













キミと出会うために。

 

 

 

 

 



暗い暗い闇の中に『彼』はずっと一人でいました。
自分が誰だったのか
そんな記憶も闇に喰われてしまうほどの長い間。
財宝を狙ってたくさんの人間がやってきましたが
誰一人として『彼』のところまで辿り着けませんでした。
『彼』のいる闇の中には多くの罠があって
皆、それにかかって死んでいきました。
人間達が死んでいくのを
『彼』は箱の中から見ていましたが
何とも思いませんでした。
可哀相だとも、悲しいとも。
そんな風に思う心も闇に溶けてしまっていたからかもしれません。
『彼』の心はもう空っぽでした。
代わりに闇が『彼』の心を占めていったのです。


ある時一人の人間が来ました。
その人間もまた罠にかかって死んでいくのだろうと『彼』は思いました。
案の定、その人間は一緒にいたもう一人の人間の裏切りによって
奈落の底へ落ちそうになりました。
このまま放っておけば確実に死ぬでしょう。
だけれども
死にそうになった人間を『彼』は助けたのです。
何故助けたのかその時は『彼』にもわかりませんでした。


その人間に連れ出された『彼』でしたが、心は変わらず闇のままでした。


それから
数年が過ぎ
 

やがて『彼』の心に光が差し込みました。
闇に飲まれていた心を照らす光。
それは空っぽになっていた『彼』の心を優しく埋めていったのです。

その時『彼』は思いました。

このためにココにいるのだと。

すべてこの心に出会うためだったのだと。



 

「気に入ったの、もう一人のボク?」
遊戯が尋ねました。
<遊戯>は遊戯が開いた本をずっと見ています。

『100万回生きたネコ』

遊戯はこの本を昔読んだことがありました。
偶々寄った本屋で見かけて、懐かしくて手にとってみたのです。
ぱらぱらとページを繰っていると<遊戯>が一緒に見ているのがわかりました。
とても熱心に読んでいます。
『・・・ああ』
遊戯はにっこり笑って本を閉じました。
そのままレジへと向かいます。
『相棒?』
「キミに、プレゼントするよ」
突然の行動に驚いた声を出した<遊戯>に遊戯は言いました。
「いいお話だから、ゆっくり読んでね」
遊戯の笑顔に<遊戯>も笑って答えました。


『・・ありがとう』


100万回生きて、白いネコと出会った。

キミに会うために、ココにいる。

『そばにいてもいいか』

ずっと

 

 

 

 

 

END






「100万回生きたネコ」というのは簡単に言うと
何度死んでも
自分を大事にしてくれた飼い主がネコが死んで悲しんでくれてても
涙を流さなかったネコが
野良猫として生きて初めて自分から一緒にいたいと思った白いネコが死んだときに
泣いたという話です。
(簡単に略しすぎ)
有名な本なので知ってる方も多いと思いますが(^^ゞ

同じタイトルでカイオモ版もアリ。

 

2003.03.28

 

 

 

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