遊闘337捏造話。城之内くんと遊戯ちゃんしか出てませんが(^^ゞ
アテム。
それが<もう一人のボク>の本当の名前。
それはエジプトの神様の名前だって御伽くんが後で教えてくれた。
神様ボクはお願いがあるんです。
「一生のお願い聞いてくれるか」
城之内くんが言った。
冗談だと言ったけど、でも多分本気だったのだと思う。
かばんの中の千年アイテム、全部川へ捨てる。
だってそれはボクもほんの少し、考えたことだから。
これが無くなったらもう一人のボクは還れない。
それはつまり。
ずっとずっとボクと、ボクや城之内くんやみんなと一緒にいてくれるっていう事。
何処にも行かない。
今までどおり、ボクと。
ボクと、一緒に。
だけど。
「昔ね」
ボクは言った。
「ボクのうちに世界の童話全集ってのがあったんだ」
「へぇ」
城之内くんは唐突なボクの話にちょっとビックリしたみたいだけど、何も言わずに先を促してくれた。
「その中に牛乳を売って耳飾りを買ったおばあさんのお話があったんだよ」
「うん」
「でもおばあさんはズルをして牛乳を水で薄めてありがたい白牛の乳だってだまして売ったの」
ボクは手すりに寄りかかって水の中を覗いてみた。
空には星がたくさん光っていたけれどその光は水の中には届かない。
真っ暗な水面。
「おばあさんは耳飾りをすごく大切にしてたんだけどある日小さな小川をまたぐときに其れを川に落としてしまった」
「で?」
城之内くんはボクの隣で同じように水面も眺めながら聞いた。
「浅い川なのにいくら探しても全然見つからなくて」
「うん」
「其処へ偉いお坊さんが通って言ったんだ」
「あなたの耳飾りは水を売って得たものだから水に溶けてしまったんだよ、って」
ボクは手にしたかばんを抱えなおした。
この中に集めた千年アイテムが入っている。
嘘をついて手に入れた宝物は水に溶けて無くなってしまった。
だけどこの千年アイテムを川に落としても溶けてなくなったりはしない。
此れは嘘ではないから。
千年パスルを組みたててからのこと――
<もう一人のボク>と過ごした時間は全部本物だから。
城之内くんはこりこりと頭を掻いて言った。
「嘘は駄目だって教訓を含んだ昔話、だよな」
「うん」
そう、嘘は駄目だ。
ボクはもう一人のボクをちゃんと送り出してあげたい。
笑顔で。
これは本当だ。
本当にそう思ってる。
城之内くんもボクと同じように思っているはずだ。
ボクが頷くと城之内くんは視線を遠くへ泳がせた。
「もう明日か〜」
明日王の記憶の石版に千年アイテムを収める。
その時に『闘いの儀』がある。
王に安らぎを与えるために、剣を置かせる儀式。
つまりそれはデュエルでもう一人のボクと誰かが闘い、勝たなければならないと言うこと。
もう闘わなくてもいいのだと、後は残されたものに任せて欲しいと。
そう伝えるための儀式。
「ボクが決闘うよ」
ずっともう一人のボクに頼っていたボクがちゃんと送り出してあげなきゃいけない。
そのために『闘いの儀』でもう一人のボクに勝たなきゃいけない。
そう思っているのは本当なのに
心のずっとずっと奥の方で叫んでるボクがいるのも本当。
お願い神様
<もう一人のボク>を
ボクから奪わないでください
神様には
言えない願い
END
遊闘337捏造話(^^ゞ
城之内くんと遊戯ちゃんしか出てませんがウラオモです。
遊戯ちゃんが話してる童話は本当にウチにあったのですが
タイトルも何も思い出せません。うろ覚え〜〜(^^ゞ
日本を始め世界の短めの童話がたくさん載った本でした。
・・インドかどっかの話だったと思うのですが。
2004.01.27