遊闘337捏造話再び。闇表←御伽って感じ。
キミの強さをボクは知ってる。
だから
キミは勝つだろう。
何となく眠れなくて御伽は風にあたろうとデッキへ出てみることにした。
甲板への階段を上ったところで先客を発見する。
見慣れた小さな背中。
学ランの後姿に呼びかける。
「・・・遊戯くん」
手すりにもたれて夜空を見上げていた遊戯はその声に振り返った。
御伽の姿を認めて名を呼ぶ。
「御伽くん」
「どうしたのこんなところで。眠れないのかい?」
「うん、ちょっと。御伽くんも?」
近づきながら声をかけると遊戯は曖昧に答えて、笑った。
その笑顔はいつもと少し違うように見える。
それが気のせいではないことは御伽にはわかっていた。
この旅の目的は<もう一人の遊戯>を見送ること。
遊戯ともうひとりの遊戯の絆はとても強い。
それは最初からわかっていた。
千年パスルを賭けてD.D.Dで対戦したあの時から。
「さっきまで城之内くんも居たんだよ」
「城之内くんが?」
「うん。もう寝るって下へ降りてったけど」
遊戯の隣で同じように手すりに凭れ掛かり風に吹かれる。
川を渡る風は頬に心地よく、静かな夜の船上は物思いにふけるには丁度いい。
ほんの少し目を伏せて話す遊戯は、多分もう少し一人でいろいろ考えていたいのだろうと察しはつく。
早く寝るように告げて此処を立ち去るべきなのだろう。
それはわかっている。
だがどうしてもそうする気になれなくて問いを口に乗せていた。
「もうひとりの遊戯くんとデュエルをするのかい?」
王の魂は
剣を携えては
旅立てず
安らぎもまた
得られぬものなり
碑文に書かれていたという『闘いの儀』
つまりそれはもう一人の遊戯と‘誰か’が闘って勝たなければならないということ。
遊戯ははっとしたように目を上げた。
「・・うん」
だがまたすぐに視線を落としてしまう。
「これはボクの『役目』だと思うんだ」
「役目?」
「うん。・・役目って言うと大袈裟かもしれないけど」
「でもこのデュエルは誰にも譲りたくないんだ」
視線を上げてはっきりと遊戯は言った。
こうと決めたら曲げない。
見た目からは想像もつかないほど強い意志を持っている。
その強さに、惹かれたのかもしれない。
「・・・でも」
しかし遊戯は再び下を向いて言った。
「もう一人のボクに勝てる自信なんて全然無いんだけどね」
不安を誤魔化すように笑う。
「もう一人のボクは強いし」
「・・そうだね」
御伽は川を見下ろしながら頷いた。
もう一人の遊戯の強さはバトルシティではっきりと見ている。
なんと言っても優勝者なのだ。
「だけど」
だがあの勝利はもう一人の遊戯だけの力ではないと思っている。
御伽は遊戯に向き直った。
「キミも強いよ」
「ボクはキミが勝つって信じてる」
遊戯は弾かれたように顔を上げた。
御伽はその目を見ながら続ける。
「だってキミはボクに勝ったじゃないか」
D.D.D―――ドラゴン・ダイス&ダンジョンズ
御伽の考案した新しいゲーム。
初めての、しかも対戦相手が作ったゲーム、という不利な状況下で遊戯は御伽に勝利した。
もう一人のボクに会いたい。
ただそれだけの思いを胸に遊戯は勝利を手にしたのだから。
あの炎の中でパズルを組み立てたのだから。
「あれは、でも」
遊戯は言った。
「運が良かったってのもあるし」
「運も実力のうち!!」
遊戯が言い終わるか終わらないかの内に御伽は言い放った。
「・・・って城之内くんはよく言うよね?」
左手を腰に当てて少しおどけて片目を瞑ってみせる。
なるべく、軽い調子で。
遊戯はその様子を見て笑った。
「・・あの時」
思い出すように遠くを見ながら遊戯が言った。
「バクラくんが『ボクが絶対勝つ』って言ってくれなきゃ諦めてしまっていたかも」
風が遊戯の髪を揺らし、その表情は御伽からは読みにくい。
「でもキミは諦めなかった」
諦めなかった。
自分の大切なものを。
大切だから、手放したくなかった。
「・・さっきも言ったけど」
御伽は言った。
「ボクはキミが強いって知ってるから」
「・・・ボクに一番足らないのは『自信』だね」
そう言って遊戯は笑った。
「ありがとう御伽くん」
「明日は頑張るよ」
別れのときが近づいている。
本当は辛いだろうに
そうやって笑うことが出来るキミの強さを
ボクは知ってる。
そうしてキミは
デュエルに勝つだろう。
笑顔でもうひとりの遊戯を送り出そうとするのだろう。
本当の気持ちは
最後まで隠したまま。
END
遊闘337捏造話再び(^^ゞ
闇様不在ウラオモ。
ウチのとぎは遊戯ちゃんファンですから。報われないけどね・・・。
このとぎは何かアニメっぽいな。
2004.02.01