さらに捏造。「キミの強さを僕は知ってる」の続き。
あれからずっと
何かが足らないように思う。
それが何なのかわからないけれど。
「ボクはキミが勝つって信じてる」
聞こえてきた御伽の声に獏良は足を止めた。
誰と話しているのだろう。
相手は容易に想像できたが好奇心からデッキを覗く。
思ったとおり、遊戯と御伽の姿があった。
盗み聞きをするつもりは無かったが話の内容から遊戯がもう一人の遊戯とデュエルをすると決意したことを知る。
しばらくして階段を下りてきた御伽をやり過ごして自分がデッキに上がる。
何故だか遊戯と話がしたかった。
眠れなくて。
「遊戯くん」
一人残って水面を眺めていた遊戯が獏良の声に振り返る。
「獏良くん」
「もう寝たほうがいいんじゃない?」
獏良は続けて言った。
「明日はもうひとりの遊戯くんとデュエルをするんでしょ」
「聞いてたの?」
「うん。ごめん聞こえちゃって」
にこりと笑って謝罪を口にすると遊戯も笑った。
それから再び水面に視線を戻す。
「ボクもキミが勝つって思うよ」
獏良の言葉に遊戯が顔を上げる。
その眼は獏良を見ているようで、そうではないようで。
「・・・御伽くんと初めてゲームしたときのこと思い出してたんだ」
遊戯が言った。
その言葉に先ほどの視線の意味を知る。
「あの時バクラくんが『ボクが勝つ』って言ってくれたんだ」
遊戯の言うその事件は獏良には覚えが無い。
リングに宿った人格。
バクラ。
<もうひとりの遊戯>とは三千年前からの因縁がある盗賊王。
何度も酷い目に合わされた。
自分の体を勝手に使って。
遊戯たちを酷い目に合わせたり。
・・・殺そうとしたり。
そんなことばかり。
「そのおかげで勝てたことを今ちょうど思い出してたんだ」
「それは」
まるでバクラが善人であるかのように話す遊戯に獏良は言った。
「千年アイテムを集めるためにいろいろその方が都合が良かったからじゃないの」
「そうかな」
遊戯はちょっと首をかしげてみせた。
「怖いし、敵だったけど」
遊戯は続ける。
「ボクはバクラくんが嫌いじゃなかったんだ」
「獏良くんも、そうなんじゃない?」
バクラクンモ、ソウナンジャナイ?
遊戯たちのところみたいに仲良くはなかった。
自分の中の別の存在が怖くて仕方なかった。
だけど
美術館で目が覚めてすべて終わったと告げられた、あの時。
あれからずっと何か足らないような気がしている。
「うん。・・そうかもしれない」
嗚呼
これは
『寂しい』のだと
突然
理解した。
END
もういっちょ捏造話(^^ゞ
闇様不在ウラオモ。
ウラオモと言うか・・獏良くんのお話。
・・本人バク獏なつもり(^^ゞ
2004.02.27