■春の歌(闇表)■

闇表。
花見に行く相談をする仲間たち。
















春が、来た。

 

 

 





校庭に植えられている桜の蕾も大きく膨らみ、今週末には咲きそうだ。
「お花見、したいなぁ」
教室の窓から桜の木を見ながら遊戯が呟いた。
「おー、いいな」
一緒に外を眺めていた城之内が遊戯の言葉に同意する。
「今度の日曜なんか丁度良さそうだな」
「いいねぇ」
その後ろからのんびりと賛同の声。
「ボクお弁当作ってくるよ」
「わあ、ありがとう獏良くん」
遊戯が嬉しそうに礼を言う。
城之内が訊いた。
「静香も呼んでもいいか?」
「もちろん!」
遊戯の声に本田と御伽の声が被る。
「・・おめーらには会わせねぇ」
城之内が兄の顔で低く呻った。
そのやり取りを見ながら遊戯はふと思い出して言った。
「あ、じゃあさ」
「モクバくんに聞いたんだけど海馬くんも日本に帰ってきてるみたいなんだ。誘って」
「駄目!」
『誘ってもいい?』と続けようとしたが複数の声に阻まれる。
「何でー?」
遊戯の抗議に明るい笑い声が重なった。
「いいじゃない、ボク海馬くんで遊びたいな」
「海馬“と”じゃなくて、海馬“で”かよ」
すかさず本田が突っ込む。
「ああ、間違えた」
「嘘付け」
しらっと言う獏良にさらに城之内の突っ込みが入った。

賑やかに、楽しく、花見の計画は進められていく。

開け放しの窓からふわり、と風が舞い込んだ。
ほんの少し冷たい、けれど優しく香る春の風。


ああ、似ている。


還って行った、彼に。
<もう一人のボク>に。

強くて、優しくて。
人を惹きつける、奇麗な人。
何をしていても、何処にいても。
彼の存在を感じる。
此処に居るのだ、と思う。
もう言葉を交わすことは叶わないけれど。

・・・確かに、此処に。


「ねえ、海馬くんに声かけてもいい?」
「いいよ」
盛り上がる仲間たちにしつこく食い下がると獏良がにこやかに応じてくれた。
「責任持って連れてきてね」
 



キミがいない、春が来た。




空を見上げて呟く。

 


ボクは元気だよ。

 

 

 

END

 







一年たちました。

闇様が帰ってしまってからどうしても暗い話ばかりになってしまっていたのですが
ようやく少し前向きな話が書けました。

みんな元気だよ。
でもやっぱり闇様に会いたいと
遊戯ちゃんと一緒の闇様が見たいと
思っちゃうけどね。


 

2005.03.08

 

 

 

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