■桜が咲いて、散って(闇表)■

■十二ヶ月を巡るお題■

桜が咲いて、散って (闇表)










 


 

 

 

 



「早く桜が咲かないかなぁ」





遊戯が窓の外を眺めて言った。
校庭の隅の大きな桜の木には当然ながら花は無い。
城之内は同じように教室から外を見て答えた。
「まだ先だろ、桜なんて」
「うん、そうなんだけどね」
今は秋。
そろそろ冬に向けて木はその葉を散らし始める。
「ねえ城之内くん」

「人が死ぬ時ってどんなときだと思う?」

何を問われたのか一瞬わからなくて隣に立つ遊戯の横顔を見下ろした。
いつもと同じ表情。

だけど視線は遠くを見ている。

此処ではなくどこか遠く。



「人が死ぬのは」
ゆっくりと遊戯は言った。
「・・・忘れられたときなんだって」


人ガ死ヌノハ、忘レラレタトキナンダッテ


覚えてさえいれば
忘れなければ
ずっとその人はこの胸の中で
生きている


記憶の中の人を思う。
・・・それは寂しさを伴うけれど。


「忘れないさ」

城之内はそう言って遊戯の頭をぐしゃぐしゃに掻き回した。
乱暴ではあるが、優しい手。
「・・うん」
遊戯は返事をして笑った。


ほんの少し涙が滲んだけれど城之内は気がつかない振りをしてくれた。





桜の木の下でボクを見て笑ったキミを忘れない。


 

 

 


END

 





拍手SSでした。
再録でスイマセン(汗)

人が死ぬのは忘れられたときだ、と語ったのは
ヤブ医者ヒルルクです。ワンピの(^^ゞ
ヒルルクの桜
あの話大好き。



 
■十二ヶ月を巡るお題■
宿花(閉鎖されました)



 

2007.04.28

 

 

 

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