■明けたなら(闇表)■

■十二ヶ月を巡るお題■

明けたなら(闇表)










 


 

 

 

 



雨が好きだ。
静かな雨の音を聞いていると、優しい気持ちになるから。



遊戯は雨が好きだ。
梅雨に入るこの時期に生まれたせいもあるかもしれない。
普段は騒がしい街がいつもと違う顔を見せるのが好きだった。
静かな街は優しく感じられる。
雨は、優しい気持ちになる。
元々運動が苦手で外で遊ぶよりもウチの中でゲームをすることが多いこともあったろう。
雨の音を聞きながらゆっくり過ごす。
その時間が、好きだった。


優しい、一人の時間。
一人きりの、時間。


「てるてるぼーずてるぼーずー」
『相棒何を作ってるんだ』
歌いながら作業していたら<遊戯>に後ろから覗き込まれた。
心の中で眠っていたのだろうが、遊戯の歌声につられて表に出てきたらしい。
「起こしちゃった?ゴメン」
遊戯が謝ると<遊戯>はイヤ大丈夫だと首を振った。


『相棒がとても楽しそうだったから』


「うん、てるてる坊主を作ってたんだ」
『てる?』
聞きなれない言葉に<遊戯>が首を傾げる。
手の中のてるてる坊主を見せながら遊戯は説明した。
「雨が早くあがりますように、ってお願いするんだよ。おまじないみたいなもの」
『流れ星に願い事をするようなものか』
この間ふたりで星を見ながらそんな話をしたことを思い出したらしい。
「うん、まあ近いかな」
言いながら遊戯はてるてる坊主の仕上げに入った。
首に紐をつけたら頭が重くて下を向いてしまったので、遊戯は少し考えて頭の天辺に安全ピンをつけた。
其処に紐を通してぶら下げる。
目と口をマジックで書いて。
「出来上がり」
<遊戯>の前で揺らしてみせる。
『此れが晴れを呼び寄せてくれるのか』
「うん」
遊戯はてるてる坊主の頭をちょい、と突いて見せた。
「梅雨が明けたら、皆でピクニックに行こうって話になってるんだ。ボクのお誕生日祝いも兼ねて、って」
『そうなのか』
「うん。この間キミも美味しいって言ってたパンケーキ、獏良くんがまた作ってきてくれるって!楽しみだね」
『そうか』
<遊戯>はそう言って笑った。
その笑顔がとても優しかったので遊戯は聞いてみた。
「嬉しい?」
『ああ』
<遊戯>は頷いた。


『相棒が嬉しそうだとオレも嬉しい』


そう言ってまた優しく笑う。
遊戯も笑った。
「ボクもキミが嬉しそうにしてるとすごく嬉しい」
二人して、笑う。


優しい、時間。
二人の時間。



雨が好きだ。
晴れた時の楽しみを待つ気持ちを与えてくれるのも雨だから。

 

 

この、時間が好きだ。




 

 

END

 





雨の日は二人きりで
いちゃいちゃしてたらいい(笑)



 
■十二ヶ月を巡るお題■
宿花(閉鎖されました)



 

2007.06.04

 

 

 

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