年上を敬いなさい(闇表)
「遊戯、台所にサツマイモがあったじゃろう。持ってきておくれ」
店の外を掃いていたじいちゃんが遊戯を呼んだ。
「はーい」
サツマイモを持って遊戯は外へ出る。
じいちゃんは集めた落ち葉に火を点けようとしている所だった。
「焼き芋だね」
「そうじゃ。遊戯も好きじゃろう?」
「うん。大好きだよ」
この落ち葉で焼き芋を作るために持ってこさせたのだ。
ほっほ、とじいちゃんは笑った。
持ってきた芋を渡そうとして、ふと手が止まる。
「あ、でも燃やしても大丈夫なのかなぁ?」
「何がじゃ?」
じいちゃんも芋を受け取ろうと伸ばしていた手を止めて首を傾げた。
「ほら、ゴミを燃やすとダイオキシンってのが出るからって言うじゃない?」
嘗ては紙ごみも庭で燃やしていたが、そのダイオキシンが問題になって、全部燃えるゴミとして回収されるようになった。
塩ビだけがダイオキシンを出すわけではないらしい。
よくわからないけれど、環境に悪いとか、身体に悪いとか言われたら従うしかない。
「ああ、そうじゃのう・・・」
じいちゃんはがっくりと肩を落とした。
「やれやれ、焼き芋も作れんとは世知辛い世の中になったもんじゃわい。・・まあ人間の自業自得といえるかも知れんがの」
「そうだねぇ・・」
しょんぼりと項垂れるじいちゃんを宥めながら、遊戯は空を見上げた。
青い空。
だけどどこか灰色がかっているようにも感じる。
彼の記憶の世界で見た空はもっとずっと綺麗だった。
何千年も昔の空。
今の空は
彼の目にどんな風に映っていたのだろう。
「まあ、仕方ないのぅ」
じいちゃんはポケットから小銭を取り出して言った。
「遊戯、焼き芋の代わりに肉まんでも買ってきとくれ」
「これ以上汚したらご先祖様に顔向けできんからの」
「出来ることからコツコツと、じゃ」
そう言ってじいちゃんはにこりと笑った。
「うん!」
元気に返事をすると、遊戯は小銭を受け取ってコンビニへ走り出した。
END
じいちゃんと遊戯ちゃんしか出てませんが
闇表と言い張る(^^ゞ
じいちゃんは全部お見通しだと思う。
■十二ヶ月を巡るお題■
宿花(閉鎖されました)
2007.11.25