雪消月(ゆききえづき) 春の匂い。冷たい風。曖昧だから大切な時間。
まるで何でもないことのように、言ってしまおうか。
「じゃあ、帰ろうか」
『そうだな』
鞄を肩に掛けてそう言うと、キミは座っていたクラスメートの机からヒョイと飛び降りた。
その姿が妙にカッコ良い。
実体は無いし、ボクにしか見えないけれど。
『どうした?』
「ううん、なんでもない」
そうやって振り返る姿もボクとはまるで違う。
サマになっている。
皆がバイトや家の用事で慌ただしく帰ってしまった放課後、ボクはほんの少し得をしたような気持ちになる。
帰り道、<もう一人のボク>を一人占め出来るような気がして。
だから人通りの少ない道を選んで、遠回りしながらゆっくり歩く。
「ちょっとコンビニ寄って行かない?」
『いいぜ』
キミは滅多なことでは嫌だなんて言わない。
優しいね。
強くて優しい<もう一人のボク>
コンビニで買った肉まんに公園のベンチで齧りつくと<もう一人のボク>が言った。
『此処で食べるのか』
「そうだよ。買い食いは外で食べるから美味しいの!」
『でもまだ寒いぜ』
多分、ボクが風邪をひいたりしないか心配してくれてるんだろう。
「大丈夫だよ」
ボクは言った。
「ほら、もう花も咲いてるじゃない」
公園には梅が植えられていて、綺麗に花を咲かせていた。
もう春なんだ。
季節が過ぎるのは本当に早いね。
キミに会ってからはさらに早くなったように感じるよ。
毎日が楽しいからかな。
千年パズルを組み上げて、キミはボクの中で目を覚ました。
記憶がなくて、最初は自分のことを<武藤遊戯>だと、ボクの一部だと思っていた。
今はそうじゃないって、千年パズルに宿った魂だってわかっているけれど。
ボクではない、別の人の魂だって知ってるけど。
「<もう一人のボク>も食べなよ。美味しいよ」
半分くらい肉まんを齧って交替を持ちかけた。
ちょっと早いけど、花見。
そんな風に言って笑うと、<もう一人のボク>も笑ってくれた。
意識を交替して、キミの隣に立つ。
今度はボクがキミにしか見えない状態だ。
『綺麗だね』
「そうだな」
肉まんを食べるキミと一緒に花を見上げる。
こんな他愛も無い会話のようにさらりと、何でもないことのように自然に、告げてしまいそうになる。
キミが、好きだ。
END
闇←表
別れは予感しているから、言わない。
ってカンジで。
アンコール上映を見てきたのですが
遊戯ちゃんが闇様と代わる時のやりとりや、
その後テーマ曲流れて闇様になるあの辺で
なんかもうじわあぁあってきちゃって
阿呆のように未だにゆうぎおうが好きだなって
自覚いたしました(^^ゞ
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Fortune
Fate
2011.02.27