■甘い孤独(闇表)■

闇表。
脱・バカップルを目指したつもりでした(^^ゞ











サミシイノ?
暗闇の中から声だけが響く。
「・・・わからない」
遊戯は答えた。
ヒトリガイヤナノ?
「・・・わからない」
遊戯は少し考えて同じ答えを返した。





深い闇の中に遊戯はいた。
真っ暗な闇の中に、ひとりぼっちで。
「ねぇ」
黒い闇に遊戯は呼びかけた。
「ねぇ、そこにいるんでしょ?」
返事は無かった。
そのかわり右手を取られた。
すぐそこにいるはずなのに。
相手の姿は見えない。
ただ闇が拡がっているだけだ。
「ねぇってば!」
姿を現してくれない相手に焦れて遊戯は大きな声を出した。
「・・・っ、なに・・?」
掴まれた右手の甲に、柔らかい感触。
知ってる、これは。
クチビルのカンショク。
まるで騎士がする敬礼のキスみたいに。
「・・・やだっ」
だけどその唇はだんだん指先に移動していった。
ゆっくり遊戯の指を舐める、舌の感触。
「・・・やだっ・・・」
ゾクゾク、する。
遊戯は手を引っ込めようとした。
だけど、動かない。
闇がクス、と笑った気配がした。
ウソツキ。
楽しげな声が闇から響く。
イヤジャナイクセニ。
「・・やめてよ!」
ふっと手が自由になった。
まだ、ゾクゾク、してる。
遊戯は右手を左手で押さえた。
コワイノ?
「怖いよ」
遊戯は闇に答えた。
「キミがいなくなっちゃうと思うの、怖い」
大好きだから。
ずっと一緒にいて欲しいから。
でも。
「キミも本当はそう思ってるんでしょう?」
ボクがいなくなったら嫌だって思ってくれるんでしょう?
キミの考えてること、わかるよ。
多分、ボクと同じこと。
だから。
そうやって。
「逃げないで、出てきてよ」
闇の黒が揺れた。
そして闇の中から<遊戯>が現れた。
「相棒・・・」
「うん」
「すまない」
遊戯はううん、と首を振って“もうひとりのぼく”の手を取った。
「キミが記憶を取り戻しても」
もう一緒にいられなくなったとしても。

「ボクはキミのこと、大好きだから」


<遊戯>は照れたように笑って言った。
「オレもだ」
そして遊戯の手のひらに自分の唇を押し当てた。


まるで誓いのように。

 

 

 


END

 




 

 

2000.09.24

 

 

 

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