■微睡みに落ちる春の昼下がり(闇表)■

■季節4題 その2
微睡みに落ちる春の昼下がり(闇表)



 














 

暖かい日差しが降り注ぐ春の窓際。
そんな教室の中は絶好のお昼寝スポットだと思う。
特にこの先生の授業はとっても眠たい。
カツゼツが悪くてほとんど何を言っているのかわからないのだ。
まるでお経のよう。
聞いているとつい眠りの誘いに乗ってしまう。
そんな授業中。
『相棒、授業中だぜ』
<もう一人のボク>の声がそう注意してくれる。
「わかってるよ…」
そう返事しながらもボクの瞼はなかなか開かない。
眠くて眠くて仕方がない。
<もう一人のボク>が苦笑するのがわかった。
「春は眠くなるもんなんだよ…」
ボクはいい訳を探す。
なんだっけ、春眠暁を覚えず、とかそういう諺かなんかあった筈だ。
昔っからきっと春は居眠りしてしまう季節だったんだよ、うん、仕方がない。
『春じゃなくても寝てる気がするぜ?』
<もう一人のボク>は意地悪な言い方をした。
声に笑いが含まれてる。
ボクが意地悪というと彼は笑った。
「でも数学の授業は眠らなくなったよ。もう一人のボクのおかげだね」
おかげ、というか、乗せられた、というか。
真面目に授業を受けておけば、きっとデュエルの時LPの計算とかもっとパッと出来るようになるぜ、なんて言うので、それからしっかり起きている。
好きなことに絡めると他の事も頑張れるって<もう一人のボク>は良く知ってる。
『英語はきっと海外の決闘者とデュエルする時に役に立つぜ』
そっか。
海外にだって決闘者は居るんだものね。
何かすごく納得した。
そう言えば海馬くんも拠点を海外に移したんだっけ。
あっちでもあの調子で頑張っているんだろうな。
そんなことを考えながらふと思う。
あれ、海馬くんが向こうに行ったのって何時だったっけ…。
起きなきゃ、と思いつつ眠くて思考が纏まらない。
ねえ、もう一人のボク、最後に海馬くんに会ったの何時だっけ……
確かあの時、砂漠に来てくれていたような…




「…ぎ、遊戯!」
杏子の声で目が覚めた。
「もう授業終わったわよ」
「あ、ごめん」
学年が上がって去年とは違う教室。
海馬くんの姿は無い。
――――勿論、<もう一人のボク>も。

 

 



ああ、夢を見ていたのだとやっと気が付いた。


幸せな、幸せな春の夢を。

 








END





闇表
闇様が還ったのが高2の終わりな筈なので
高3になってすぐ、くらいなカンジで。

春は必ず闇表ネタを書いている気がする…(^^ゞ



お題は此方から
現世の夢

 

2012.03.25

 

 

 

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