クリスマスの話。
「クリスマスのプレゼント、何にしようか悩んだんだけどさ」
クリスマスパーティと称した騒ぎが終わってみんなが帰った後、自分の心の部屋で遊戯は<遊戯>に切り出した。
クリスマスっていうのは確かキリストの生まれた日でプレゼントをあげるうんぬんではなく宗教的なものなのではないのだろうか。
自分の部屋であるかのようにくつろいでいた<遊戯>は顔を上げて言った。
「別に、いらないぞ?」
「そんなこと言わないで、見てよ。ね?」
心の中であげられるものってなんだろうって一生懸命考えたんだからさ、などと言いながら遊戯は映写機のようなものをどこからか持ってきた。
それはじいちゃんの持っているものと似ていたが遊戯の心の産物なのでちょっぴり変だった。
それでも心の中だからちゃんと動き出す。
部屋の壁いっぱいにカウントダウンの数字が映し出される。
そしてじいちゃんのUPから始まった。
何をくれると言うんだろう。
遊戯はいつもたくさんのモノを自分に与えてくれるのに。
それは、優しさだったり、強さだったり。
そして、笑顔だったり。
そんな形のない、けれど確かなもの。
『ねぇじいちゃん、コレなに?』
遊戯の、でも今より幼い声。
そして画面に写ったのは千年パズルの入っていたあの箱とそれを持つ小さな手。
「これは・・?」
「ボクがはじめてパズルを見つけたときの記憶だよ」
『ねぇこれボクにちょうだい』
『遊戯に出来るかのう』
『絶対完成させてみせるよー』
そしてパズルを組み立てる、手。
「ボクの記憶だから、ボクの見たものが写るんだね」
手ばっかりだ、と遊戯は笑った。
そうだな、と<遊戯>も笑う。
でも。
遊戯の思いが伝わってくる。
遊戯がどれだけ懸命にパズルを作ったかが。
「不思議だね」
遊戯が言った。
「ボク最初キミが怖かったんだよ?」
「・・・知ってる」
<遊戯>が答えた。
「でも今は大好きだ」
「ああ」
それも知ってる。
だってそれは<遊戯>も一緒だから。
遊戯が嬉しそうに笑うので<遊戯>も嬉しくなる。
遊戯の笑顔を見ていると自分の胸の奥に小さな炎が灯るのがわかる。
そしてその炎は内側から<遊戯>を暖めていく。
温かい炎。
この温もりをくれた大切な者に出会えたことを今日は神とやらに感謝してクリスマスを祝ってもいいかもしれない。
Happy merry Xmas
END
2000.12.24