■ホワイトディ(闇表)■

闇表。
こちらもチョコレートの続き














コンビニの扉の前で遊戯は立ち止まった。
「じゃ、代わるね」
『ああ』
遊戯にしか聞こえない声が答えて、瞳が閉じられる。
もう一度開いた時にはもう別人のようで。


『ねえ、<もうひとりのボク>、カゴ持ってよ』
「ああ」
カゴがいるほど買うつもりなのだろうか。
ホワイトディに何かお返しがしたい、という<遊戯>の申し出を遊戯は意外なほどあっさり受けた。
遊戯の性格からして悪いからいらないとかなんとかごねると思っていただけにちょっと拍子抜けだ。
どうも城之内が何か言ったらしいのだが詳細はわからない。
それは少し引っかかっていたがとりあえずホワイトディ当日お返しを買うために“ふたり”でコンビニに寄っている訳だ。
『ポッキー買って!今ね、モーむすのシールついてるんだよ』
お菓子の棚の前で遊戯が言う。
「もーむす?」
箱を手にとりながらそれは何だと<遊戯>が尋ねる。
『アイドルだよ』
「・・・好きなのか?」
『うん。あのね10人全員いるのってレアなんだってさ』
思わず真剣に問いただしてしまったが普通の高校生並みには好きということらしい。
遊戯にしてみれば“M&Wが好き”というのと同じ感覚のようだ。
<遊戯>は赤い箱をカゴに入れる。
『チョコボールも〜!ボクいちごの』
「オレはピーナッツの方がいいな」
『じゃあ選んでよ。パッケージの色が濃い方が当たりなんだって』
当たりを集めて送ると何か貰えるらしい、が。
・・・ホワイトディってこういうものなのだろうか。
なんだか違うような気もするがバレンタインの時もこんな感じだった。
あの時はカゴを持っていたのは遊戯だったが。


でもこんな風に“ふたり”で買い物をするのは楽しい、と思う。


『ねえ、イチゴ牛乳プリンも買ってよ』
遊戯がもうひとりの<遊戯>の袖を引っ張るそぶりをしながら言った。
それから、<遊戯>の顔を覗き込む。
『なに?どうしたの』
「いや、楽しいな、と思って。こういうのも」
<遊戯>が笑いながら言った。
『楽しいよね』
遊戯も笑いながら言った。


『来年のバレンタインもチョコあげるから、またこうやって一緒に買い物しようね』

「・・・ああ」


遊戯がさらに嬉しそうに、笑った。



『来年も、一緒に』
それは果たされるかどうかわからない約束。
先のことはわからない。


いつまでこうやって一緒にいられるのかさえ。


もしかしたらしてはいけない約束なのかもしれない。
ただ遊戯を悲しませるだけになるのかも。

それでも一緒にいたいと言ってくれた遊戯の気持ちが嬉しかったから。
そして。

<遊戯>も同じ気持ちだから。



『ずっと、一緒に』





『ねえヤキソバパンも食べたい!』
なんだかさらにホワイトディから遠ざかっている気がする。
照れくさくなってしまったのか遊戯はハイテンションだ。
「そんなに食べると太るぞ」
<遊戯>は大事な相棒をちょっとからかいながらカゴの中にパンを放りこんでレジに向かった。







 

END

 



 

2001.03.14

 

 

 

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