でも闇様にはずっと一緒にいて欲しい私。
扉を開けて呼びかける。
「ただいま」
それに答えてくれる、声。
「おかえり」
―あたたかい空間。
鍵を開けて家に入る。
じいちゃんも出かけてしまって今日は家に誰もいない。
いないとわかっていながら遊戯は家の中に向かって言った。
「ただいまー」
『おかえり』
すぐそばで返事があった。
もう聞きなれた、その声。
自分のようで、それでいてまったく違う低めの響きで。
遊戯の好きな声。
<もうひとりのボク>
遊戯はくす、と笑った。
「なんか、ヘン」
『何がだ?』
<遊戯>は怪訝そうに聞き返す。
「だって、一緒に出かけて一緒に帰って来たのにさ」
『“ただいま”には“おかえり”って言うもんだって相棒が教えたんだろ』
<遊戯>の少し拗ねたようなその物言いに遊戯の笑みは深くなる。
こんな<遊戯>を見られるのは遊戯だけ。
こんな<遊戯>を見せてくれるのは遊戯だけ。
「だからさ、<もうひとりのボク>も言ってよ、ただいまって・・・ボクに」
『・・・ただいま』
「おかえり」
2人して顔を見合わせて笑う。
他人の目には多分、ひとりで微笑む遊戯はヘンに写るのかもしれないけど。
遊戯にとってそれは確かなものだから。
優しい、時間。
こんな時間がずっとずっと続いたらいいのに。
だけど。
もしキミが記憶を取り戻して、この時間が失われたとしても
キミの還る場所は、・・・ココにあるから。
END
2001.04.20