出逢っただけで(凌W)■


恋に堕ちた人




 

 



 

クラゲ野郎を倒して、毒は消えたようだ。
少し呼吸が楽になった。
けれど受けたダメージが急に無かったことになる訳もなく、なかなか立ち上がれない。
「おい、凌牙。大丈夫か」
「触るな」
伸ばされた手を思わず払っていた。
打たれた手を見て、当然だという様にWは笑った。
違う。
出会ったときからずっと、コイツが憎かった。
けれどオレはもうお前のことを憎んではいない。


全部、悪いのはバリアンだ。


フェイカーを唆し、トロンと、遊馬の親父を異世界に飛ばした。
トロンの為に動いたコイツの気持ちはわからないでもない。
オレは璃緒の為なら何でもやる、其れがコイツにとっては親父だっただけだ。
悪いのは、バリアンだ。
だからオレはバリアンを許さない。
けれどあの遺跡で見たように、オレもバリアンかもしれない。
決して許さないと誓ったバリアン…その仲間なのかもしれない。
そうしたらむしろコイツは被害者なのではないだろうか。

コイツの方がオレを憎んでしかるべきなんじゃないだろうか。



アレだけ憎んでおいて、反対に憎まれることは怖い、なんて。
憎まれたくはないなんて。






虫のいい話だ。

 

 







バリアンのクラゲ野郎を叩きのしたから、毒は消えた筈だった。
それでも受けたダメージが急に無くなる訳もない。
膝をついたままなかなか立ち上がらない凌牙に思わず手を伸ばす。
「おい、凌牙。大丈夫か」
「触るな!」
ぱしん、と乾いた音を立ててその手は振り払われた。
凌牙の反応は当然だ。
オレ達の、オレのせいで妹は怪我をして長いこと入院していた。
オレは笑った。
なのに凌牙はまるで罪人のような顔で此方を見て、さっと視線を逸らした。
オレはまた笑う。
罪人はこっちだっつーの。
なんでお前がそんな顔してんだよ。
そんな顔をされたら居た堪れないだろ。
オレはお前に憎まれて当たり前のことをした。


お前はオレを嫌っていていいんだよ。
出会った時からずっと、其れが当然なんだから。


「おい遊馬、コイツ立てねえってから手を貸してやれよ」
「お、おう」
遊馬なら大人しく肩を借りるだろうと思ったが、凌牙は奴を押しのけた。
「おい、W」
「なんだよ」
「こいつじゃチビすぎんだろ。お前の肩貸せ」
「はあ?」
何言ってんだコイツ。
そう思ったがVがオレのことをぐいぐい押すので仕方なく戻る。
「なんなんだよお前」
「いいからさっさと肩貸せ」
「へいへい」
凌牙は此方を見ない。
何だお前、オレのこと可哀相とか同情しちゃった訳か。
親にいいようにオモチャにされた可哀相なコとか思ってんのか。





同情なんかされるくらいなら、憎まれた方がマシだ。









END

 


凌W
Wさん再登場おおめでと〜〜!!ってことで
クラゲ先輩とのデュエル後を捏造してみました
出会ったことが罪だった的なwww


トロンさまが凌牙さんを巻き込んだのは
バリアンだって知っていたのでは…という気もする


 

お題はこちらから
corona

13.08.03

 

 

 

 

 

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