■海へ行きたい。(XW)■

XW
というかトロン←Wみたいな。


 

 



 

いつの間にか、極東チャンピオンだ。
メディアへの露出の多いWはそれなりに忙しい。
こうやってWだけが表に出て動き回る事にもトロンによれば「それぞれの役割」があるらしい。
今は其れに従うだけだ。
フェイカー達に復讐すると、トロンに従うと、自分で決めたのだから。
弟も良く働いている、と思う。
時折トロンに対して反抗的に振舞うのが気に障るが、それでもナンバーズ回収に一番功績があるのはWだ。
だからこそこうやって迎えに出てやったのだ。
車など使わなくとも今の自分達には簡単に移動できる手段がある。
紋章の力を使えばもっと早く移動出来るとわかっている。
それでもまだこの力を公にしない方がいいと言うトロンの意見に従ってこうやって車を走らせている。
弟は今は大人しく助手席でぼんやりと外を眺めている。
トロンに対する態度も理解出来ないが、最近弟が何を考えているか解らない。
昔は何でも解ったというのに。
疲れたのか、と問いかけるとWは言った。
「海行きたい」
「この時期にか」
まだ水は冷たい筈だ。
「海行きたい」
ぼんやりと独り言のようにWは繰り返す。
「そういやあの時Vが取られたサンダル、何処行ったかなあ」
末弟は、初めて行った海で、寄せては返す波が怖くてなかなか足を水につけられなかった。
思い切ってそっと足を入れようとしたらば、丁度水が引いてしまいビーチサンダルは波に攫われてしまった。
まだ海に着いたばかりで着替える前だったから、大人たちが水に入るのを躊躇している間にサンダルはどんどん沖へ流されて行った。
あのサンダルはどうしただろう。


あの時は父も居た。


「Vのヤツ大泣きしてさ」
くすくすとWが笑う。
買ったばかりのビーチサンダルを失った末弟は大泣きし、結果帰りに新しいものを買ってやる羽目になったのだ。
其れに不貞腐れたのは今度は次男だった。
弟ばかりズルイ、というのが彼の言い分だった。
確かに次男のサンダルはお下がりであったし、海に行くときにもそれで少し駄々を捏ねていた。
「クリスの使っていた奴じゃ嫌なのか?クリスの事は好きだろう」
父は幼い次男の前にしゃがみ込んで問いかけた。
「好きだけど」
視線を落として次男は口を尖らせる。
「来年、もう少し背が伸びたらちゃんと新しいのを買ってあげる」
「ホント?とうさま」
「ああ、本当だ」

父親に大きな手で頭を撫でられて、明るく笑った弟の顔を、覚えている。




助手席で窓の外を眺めながら次男は海へ行きたいと繰り返す。
「…何か不満でもあるのか」
「別にー」
我儘が通らないとみると、Wは不貞腐れたように寝ると宣言して目を閉じてしまった。



Wが行きたいのは海ではないのだ。
Xにはそれしかわからなかった。






END


 

 


XWというかトロン←W?

Wさんトロンに反抗的だなと思っていたけど
認めて欲しかったんだなーっつー
Wさんが一番働いてるのにトロンは結構冷たいと思ってしまう…(^^ゞ

今のうちに書ける話は書いておこう的な。

12.06.03

 

 

 

 

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