「…最近のW兄サマはちょっとやり過ぎだと思うんです」
本人不在の茶の席で末の弟がそう言った。
トロンも席を外している今だからこそ、Vは自分に相談したいのだろう。
近頃のWの行動は確かに行き過ぎたモノがある、とXも思う。
ファンサービスと称して相手を叩きのめす。
其処までする必要性は無いのに。
何時から、だろうか。
そう、多分神代凌牙の妹とのデュエル、あの後くらいからだ。
トロンが遠回しながら死を望んだ少女を結局Wは助けた。
殺せなかった。炎の中で見捨てる事が出来なかった。
トロンは特にそれに対して何も言わなかった。
しかしWはその代わりとでも言うかのように、他の者に対して行き過ぎとも言える行為を繰り返す様になった。
そうしなければ、トロンに見捨てられるとでも思っているかのようだ。
その辺りの事情を勿論V走らない。
Xはカップをソーサーに戻してゆっくり言った。、
「放っておきなさい」
Vにはそう言うしかない。
「アレは試しているんんだ」
「試す…?」
兄の言葉が理解出来なかったようにVは首を傾げた。
そう、試しているのだ、愛を。
此処までやってもまだ兄は弟は、自分を愛してくれるかどうか。
何処まで許されるのか。
失うことを恐れながら、試さずには居られない。
まだ家族が自分を必要としてくれているのか、確かめないで居られない。
「…よくわかりません」
Vは困ったようにそう言って目を伏せた。
「とにかく放っておきなさい」
末弟はこのままでいいのだ。
そうして時々『やり過ぎです、W兄サマ』と眉を顰めて注意してやればいい。
兄も弟も…父も、お前をちゃんと見ていると、示してやる。
それだけで。
END