遊アス遊
オボミ戦の後くらい
「ただいまー」
「おかえり遊馬」
居間でパソコンの画面を広げ仕事中の姉の後ろをすり抜けて行こうとしたら祖母ちゃんも出てきた。
「おかえり遊馬や」
「ばあちゃんただいま…っと」
急に出てきた祖母を避けようとした拍子にデッキケースの蓋が開いて中身をばらまいてしまった。
「あ〜…」
「おやおや」
拾い集める遊馬を祖母ちゃんが手伝ってくれる。
明里からは当然のように小言が降ってきた。
「バタバタ走るからでしょ!…あら」
ソファの上に飛んだ一枚を拾って明里が言った。
「星に願いを、なんてカードがあるんだ」
デュエル禁止令は解除されたものの、姉にカードを持っているところを見られるのは未だに怒られるのではないかとちょっとドキドキする。
そんな遊馬の気持ちなど知らぬ気に明里はそのカードに興味を示した。
「あ、忘れてた。オボミに返さなきゃ」
この間オボミとデュエルした時に使って、それきり忘れていた。
「オボミのカードなの?へえ」
「何?何かある訳?」
<星に願いを>がオボミのカードだとそんなに感心するような何かがあるのだろうか。
遊馬の問いに明里はサラっと言った。
「ピノキオじゃない」
「ピノキオ?」
明里はパソコンの画面の一つを検索サイトへ繋いで見せてくれた。
ついでに音も流してくれる。
「あ、此れ聞いたことある。何だっけ…珈琲のCM!」
『この曲が<星に願いを>なのか』
アストラルも興味をそそられたらしく、画面を覗き込む。
『つまりキミが<ブルー・フェアリー>ということだな』
「なんじゃそりゃ」
ブルーフェアリーって女神さまだろ。何で女神さまなんだよオレが。
ミスキャストもいいところだ。
『オボミはキミによって命を吹き込まれたからだ』
「別に命なんて吹き込んでねえっての。本来のオボミに戻っただけだろ」
宝石強盗なんて、そんなことする奴じゃないのだ。
アストラルは少し考えて言った。
『確かに<本来のオボミ>という言い方の方が正しいかもしれない。…風也もそうだった』
風也は本来の自分とロビンという役柄の上の自分の間で悩んでいた。
本当の自分を出せるようになったのは、風也の母ちゃんがちゃんと其処のトコわかってくれたからで、別に自分の手柄ではないと思う。
しかしアストラルは其れはキミと風也のデュエルを見たからだと主張した。
『風也や…シャークもそうだがキミとデュエルをすると皆変わるな』
凌牙の名が出て少しドキッとする。
例の一件の後、ちゃんと学校へ来ているらしい。
デュエルをしたら相手がわかるって思ってる。
デッキにはソイツの想いがいっぱい詰まってるから。
本当に自分とデュエルすることで何か変えることが出来るなら…
お前は?アストラル
オレと一緒にデュエルするようになって何か変わったの。
聞いてみようか、と口を開きかけた時、明里が言った。
「遊馬何時まで見てんの?気に入ったならその曲ダウンロードしといてあげるわよ」
ご飯にするわよ、と明里が呼ぶ。
「あ、うん」
慌てて返事をしながらそっとアストラルを見上げる。
アストラルはまだ画面を覗き込んでいた。
何時か機会があったら、ちゃんと聞いてみよう。
お前はオレと一緒にデュエルして楽しいのかって。
END