■黙っていれば。■

遊アス遊



 



 

 

ふと見上げたアストラルの唇が、いやにツヤツヤしているような気がした。
ふっくらしているというか、まるで小鳥がリップクリームを塗った後みたいに見える。
こういうのなんて言うんだろう、……?
ピッタリの表現が思いつかなくて遊馬は唸る。
…綺麗、とか。美人、とか。
男(多分)相手にそういう言い方も可笑しいかもしれないが、その辺が近い言葉な気がした。
アストラルは黙ってさえいれば、中性的で綺麗だと思う。
黙ってさえいれば。
口を開けば何だかんだと五月蠅くて辟易するけれど。
きっとあっちの世界では風也みたいに女の子たちにきゃあきゃあ言われていたんだろう。
何だか面白くない。
『どうした遊馬』
唸る遊馬に気がついたらしくアストラルが顔を覗きこんでくる。
綺麗な顔。
ちょっと焦った。
「いや何でもね。あ、お前さ、クチ何か塗ってる?リップクリームとか?」
誤魔化す様に変なこと聞いてしまう。
アストラルは首を捻った。
『リップ?』
リップクリームがわからなかったらしい。
まあそりゃそうだ、オレはそんなもん使わないし。
「小鳥が良く塗ってるだろ」
こうやって!
リップを持ったカンジで口の所で動かす。
身振りを加えて説明してやると合点がいったらしい、ああアレか、とアストラルは頷いた。
それから嫌な目で此方を見る。
此れはアレだ、馬鹿にしてる目だ。
遊馬、キミは本当に馬鹿なのだなって顔だ。
『私はこの世界の物質に触れることが出来ない。それは不可能だ』
「あ、そういやそうだっけ」
そういやアストラルに触ろうとしたらすり抜けてしまったことがあった。
そもそも半分透けてるから最初は幽霊だと思ったくらいだし。
アストラルははあーっと長く溜息をついてみせた。
此れはもう思いっきり馬鹿にしてる。
『遊馬、キミは物覚えが悪いな』
「うっさい!」
全く喋ると本当に憎たらしい。




美人、とか思って本当に損した気分になって遊馬はあっかんべえと舌をだした。


 





END



遊アス遊
いやアストラルって美人だなって思って。

 

11.10.23

 

 

 

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