■空を飛べるはず(京クロ)■

京クロ
出会い捏造これのクロたん視点版











 


サテライトの空はいつでも濁っていて、月なんか見えやしない。
霞んだ雲の向こうにぼんやりと黄色い塊が浮かんでいるのが何とかわかる程度だ。
月って本当はどんな色なんだろうって思っていた。


鬼柳京介。
そんな名前の結構強いデュエリストが居るって話を聞きつけて、ちょっと興味を持った。
どんなデュエルをする奴なんだろう。
見てみたくて出掛けてきた訳だけど、そういや名前以外何も情報が無い。
とりあえずこの辺で誰かとっ捕まえて聞いてみるかな。
廃ビルの上でぼんやり考える。
ナントカと煙は高い処へ登る、なんてジャックはよく人の事馬鹿にするけど、高い処は遠くまで見渡せるし、偵察と情報収集にはもってこいなんだ。
それに、空に近いしな。
ダイダロスブリッジから飛んだ伝説の男みたいに、オレもいつか自由に空を飛んでみたい。あの汚い雲を抜けて本当の月を見てみたい。
なんてジャックはまた馬鹿にするから言わないけど。
さて、此処に居てもらち明かないし、誰か捕まえに行くかな、と思ったら、下でデュエルが始まった。
なんかチンピラに絡まれたらしい兄ちゃんが言う。
「デュエリストなんだろ?だったらデュエルで決着付けようぜ」
遠目でもはっきり分かるほど綺麗な男だった。
ジャックなんか誰が見たってハンサムだって言うだろうし、遊星だって髪型は独特だけど、結構綺麗な顔してる。
あいつらを見慣れてる俺でもちょっと吃驚するくらい顔の整った奴。
女にもてるんだろうなぁ、いや別に羨ましくなんかないけどな!
絡んできたチンピラもデュエルディスクを構えた処でソイツが言った。
「満足させて貰おうか」
満足て。
何だそれ、変な奴。面白い。
どんなデュエルすんのかな、と眺めていたら、結構強かった。
なんか楽しそうにデュエルするもんだから、こっちも楽しくなる。
チンピラよりもすっかりコイツの味方だった。
コイツとデュエルしてみたい。
このデュエルが終わったら、捕まえて、デュエルしようって言ってみよう。
そう思ってわくわくしながら終わるのを待っていたら、乱闘になりそうな雰囲気になってしまった。
多勢に無勢。
此処は加勢してやるっきゃないだろ。
飛び降りたら、凄く吃驚した様子だった。
見開いた眼がこっちを見てる。



あ、月。
月って多分こんな色。
一瞬そんな風に思った。

あの雲の向こうの月は、こんな色をしてるんじゃないかって思う黄色い目。




「オレ、クロウっつーんだ。お前は?」
「オレは鬼柳京介」
「え、お前が?」
どうやらコイツが探していた当の鬼柳だったらしい。
改めて下から上まで眺めてみる。
へえ、コイツが。
噂の鬼柳がこんなキレイな男だとは予想外だった。
「オレの事、知ってんの?」
「ああ、強え奴が居るって聞いて、どんなんかなって見に来たんだ」
「有名になるのも悪くないな」
鬼柳はそう言ってお月様みたいな目を細めて笑った。
笑ってもやっぱり綺麗な男だ。


何故だかちょっとドキッとした。

 

 




なんとなく、鬼柳とだったら、一緒にホントの月を見れるんじゃないかって思ったんだ。






END




京クロ
実は一目惚れ的な。
ジャックや遊星たんと一緒に育ったクロたんはメンクイだと信じて疑わない。







2011.05.01

 

 

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