今年は勝負の年だ、とクロウは思っている。
此方に来た最初から、数年の間は準備期間と決めていた。
プロの世界だ、そう簡単に上に行けるなんて甘いことは考えていない。
一人でやっていることではない、チーム戦であることだし、まずは地慣らしからと思っていた。
足場をしっかり固めてから頂点を目指すのだ。
だが、今年こそ。
その自信があったからこそ、鬼柳に招待状を出すことにしたのだ。
カッコ良いところを見せたいし、勝利を祝って欲しい。
その喜びを分かち合えたら嬉しい。
ピットに近い最前列の一番いい席。
航空券も手配したし、宿泊先も抜かりはない。
そんな訳でそれらを手紙と共に鬼柳へと送ろうとしているのだが、此れがなかなか難しい。
クロウは手紙を書くのが、というか、字を書くのが苦手だった。
カタカナ言葉は喋るのも不得手でなんだか怪しい単語になってしまうというのに、其れを書くとなると益々訳がわからなくなってしまう。
メールのように用件だけ送ればいいかとも思うが、其れも味気ない気がして真っ白な便箋の前でクロウは唸った。
拝啓とか前略とか其処からもう良くわからん。
出だしから躓いている状態だ。
まあ相手は鬼柳だし、そんな形式ばらなくてもいいか。
「とりあえず書いとくべきことだけ書き出してみるかな」
下書きのつもりでまずは気楽に箇条書きにしてみることにした。
後で清書なりなんなりすればいい。
デュエルのある日時、場所、宿泊先はちゃんと確保してある事。
身一つで来ればいい。
「…此れは書かなくていいか」
なんか嫁に来いって言ってるみたいだ。
そんなことを言ったらあの馬鹿は絶対「嫁はクロウの方だろ」とか阿呆なことを言うに違いない。
容易に想像ができて、2本線で其れを消す。
後、他にアイツに伝えたいことって何だろう。
考えて、結局紙に書いた言葉は。
『会いたい。』
書いてからものすごく恥ずかしくなった。
何だかんだ言っても其れが自分の本心から出た言葉なのだと気が付いてしまった。
書いた一枚目を破いて棄てる。
投げた紙屑はゴミ箱へと消えた。
「ああもうメンドくせえ!」
用件だけ書けばいいや。
すっかり考えるのが面倒臭くなってしまった。
鬼柳は素っ気ないと文句を言うだろうか、それともらしいと笑うだろうか。
END
京クロ
クロたんは字を書くの苦手そうな気がするわけで
うんうん唸りながら書いてたら可愛いかなと思った訳で
早くクロたんと京介に会いたい!(再放送)
>京介編