■手紙(京クロ)■

京クロ
プロになってから











 


クロウからエアメールが着た。
封筒の中には大会のチケットと航空券、それに宿泊先などが書かれた酷く簡潔な手紙。
愛の言葉の一つでも書いてくれたっていいのに。
しかし学校など行ったこともないクロウが文字を書くのが得意で無いことは鬼柳も知っている。
この手紙だってクロウなりに一生懸命書いてくれたのだろう。
「それにしても至れり尽くせりだな」
此方は金銭面での心配はしなくていいように全部手配してくれたらしい。
そんなに気を使わなくたって大丈夫なのに。
しかしその分、本当に見に来て欲しいと思ってくれてるんだな、と考えるだけで嬉しくなる。
会うのは本当に久しぶりだ。
素っ気ない手紙でもとても愛おしい。
にしてもエアメールってこんな薄い紙に書くもんなんだなあ。
町長として手紙を書くことも少なくは無いが、近頃はパソコンで、という方が圧倒的に多い。
クロウからの連絡も大抵メールだった。
直筆の手紙は用件だけでもやっぱり嬉しくて、こういうのもたまにはいいもんだな、と思いながらその紙を掲げて見た。
「…ん?」
よく見ると何か書いて消したような跡がある。
多分筆圧が強すぎて上の紙に書いた文字が写ってしまったのだろう。
「…身一つで…こい?」
その字を2本線で消した後まで残っている。
嫁かよ!
思わず笑ってしまった。
嫁はクロウだろ、と突っ込みたかったが、多分それも向こうは予測済みだろう。
消してあるところがなんともクロウらしい。
「…と、鉛筆!」
他には一体何が書いてあったのかと鉛筆を持ちだしてそっと痕を擦ってみた。
其処に浮き出た文字は。



『会いたい。』




実際に送られてきた手紙には書かれていなかった、けれど、それはクロウの本音。
ああ、そう言えば本当に会えるのは久しぶりだ。
そう思ったら猛烈にクロウに会いたくなった。
今すぐに。


「待ってろクロウ、仕事全部片付けて速攻行くからな!!」

 

 




町長の叫びは町中に響き渡ったという。

 





END




京クロ
この間の京介編
多分町長が騒いでも町の皆さんは
ああ、またか
くらいな反応だと思う(笑)




>クロウ編


2012.03.10

 

 

>戻る