■何故(牛遊)■

牛遊
ラーメンの続きっぽい。
また奢ってもらってます。











ラリーが部屋にやってきたとき、丁度遊星は食事をしようとしているところだった。
自分で適当に作ったシチュー。
料理は得意なわけではないが、手先が器用なせいか、それなりのものは作れる。
機械弄りと違って興味が無い分野なので、野菜の切り方も味付けもかなり適当だが。
ラリーたちとは一緒に食事をすることもあるが、遊星は自分の好きなことに熱中すると、時間を気にしなくなるので、別々に食べることが多い。
「食べるか?」
聞くと、ラリーは遠慮がちな小さい声で言った。
「でも、遊星其れ好きでしょ」
サテライトの食の事情は、シティのものと比べたらやはり悪い。
それでも自分で稼げるようになれば、個人の差はあれど、とりあえず食うには困らない。
腹いっぱいで動けないほど食べる、ということは無理でも。
遊星は自分で機械を直したり出来て、それで収入が得られる分、他人よりもいくらかマシな方だった。
ラリーはまだ幼い。
いくら工場へ行って働いても大人と同じだけの働きは出来ない。
賃金は貰えない。
ブリッツたちもギリギリの生活であるから、ラリーばかりに構っていられないのもわかる。
育ち盛りの子供、出された食事だけでは足らないこともある。

ひもじいのは、辛い。

「まだある」
そう言ってもう一枚皿を出してきて、自分の皿から半分わけてやる。
子供は遠慮なんてしなくていいと思う。
もうひとつスプーンを出してきてラリーに握らせてやると、腹が減っていたらしいラリーは嬉しそうに笑った。
「ありがと、遊星」
笑うラリーと食べる食事は一人で食べるよりもずっと美味かった。





あれから牛尾には何度かラーメンを奢ってもらった。
いつも遊星の意見など聞かずに、牛尾が勝手にチャーシュー麺を頼む。
そして自分のチャーシューの大半を遊星の丼に移す。
今日もそうやって移されたチャーシューをじっと見つめながら、遊星は訊ねた。
前から聞きたかったことだ。
「アンタ、これ嫌いなのか?」
「アンタじゃねーよ。『牛尾さん』だ」
しつこく訂正してくるので言い直してやる。
「ウシオサン、チャーシュー嫌いなのか?」
「嫌いでチャーシュー麺頼む馬鹿がいるか」
今度は心底呆れたような声が返ってきた。
「・・・じゃあ、何でくれるんだ」
「ああ?なんでってお前・・」
牛尾は遊星の問いに動きを止めた。
少し考える素振りを見せる。


あの時。
自分の食事を減らしてまでも、ラリーに分けてやったのは何故だったろう。

ただ、相手の笑顔が嬉しかったからではなかったか。

もしかして、この男もそんなことを考えているのだろうか。




遊星が箸を止めてじっと見ていると、牛尾はいきなり頭をばし、と叩いた。
「んなこたどうでもいいんだよ。お前は其れ好きなんだろうが。ブツブツ言わずにありがたく食ってりゃいいんだ」
返答を誤魔化すように直もぶつぶつ文句を言う。
「まったく糞餓鬼はぐたぐた理屈っぽくて可愛くねぇ」
その言い方にやっぱりむっとする。


「ウシオサンは、年寄りくさいな」


自分の中に浮かんだ仮説を誤魔化すように、そう言ってやると、脳天に拳固が降ってきた。





END







遊星たんって皆に「頼られる」方が多くって
甘やかしてもらうことは少なかったんじゃないかなって。
だからなんで貰えるのかわからない。
牛尾さんからしたら何故って言われてもなぁ・・みたいな(^_^)


次はアイスです(食べ物予告か)




2008.09.13

 

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