■とける(牛遊)■

牛遊。
微妙にこれの続きっぽい









こんな暑い日に外回りとはついていない。
しかしこれもシティの安全を守るセキュリティの仕事だ。
とは言えあまりの暑さに少し涼もうと、近くの公園でDホイールを停めた。
其処へ見慣れた赤いDホイールが通りかかった。
このシティで何処に住んでいるのか知らないが、どうも通り道らしく良く会う。
そしてラーメン屋の常連となりつつもあった。
わざわざDホイールを停めて、遊星が言った。
「なにサボってるんだお巡りさん」
「お巡りさんじゃねぇ、セキュリティって言え。だいたいサボってるんじゃねえよ。休憩だ休憩」
「税金から給料貰ってるんだから怠けるなよ」
「そういう台詞は税金納めるようになってから言え糞餓鬼が」
ああ言えばこう言う、まったく憎たらしい餓鬼だ。
普段は無口なくせに、屁理屈ばかりは達者なものだ。
しかしこの暑い中、口論するのも馬鹿馬鹿しい。
牛尾はポケットから何枚か小銭を取り出して遊星に握らせた。
ここから見える場所にある、コンビニを指差して追い払うように言う。
「ほら、釣りは駄賃にやるからちょっとあそこ行ってアイス2つ買って来い」
「・・・アイス?」
「何でもいいから」
遊星は手の中の小銭を眺めながら言った。
「パシリか」
「『お使い』だよ、糞餓鬼」
子供は大人のお手伝いをするもんだ。
納得しない様子だったが遊星は自分のDホイールを牛尾のものの隣に停めるととてとてと歩いていった。
アイスじゃなく、珈琲にでもするべきだったか。
珈琲が飲めないほど子供というわけでもあるまいに、何故かその辺のチビどもと同じ扱いになってしまう。


図体だけは一人前の、甘えることを知らない子供。


その子供がアイスを手に戻ってきた。
牛尾の前に立ってひとつをずいと差し出す。
受け取ると、続いて釣りを返そうとするので、それを遮って牛尾は言った。
「さっさと食えよ。この暑さだ、すぐ溶けちまうぞ」
まだ不満そうな遊星を放っておいてアイスの包装を破いた。
並んで座り込んでアイスを食べる。
バニラのアイスキャンディ。
やってることは中坊と変わらない気がするなあ。
ガリガリとアイスを齧りながら、ぼんやりとこの間の遊星の問いを思い出していた。
『なんでくれるんだ』
何故なんて、そんなこと。
チャーシューが好きだって言うからやった、それだけだ。



それ以上の理由なんて、無い。



最後まで齧り終わると、牛尾は近くのゴミ箱へ包装と棒の部分を分けて捨てた。
遊星の方を振り返って言う。
「おい、ちゃんと分別して捨てろ、・・・よ」
遊星はまだアイスを食べていた。

溶けて垂れそうになったアイスを舌で舐め、しゃぶるように口に含む。

うっかり眼が離せなくなる。
「ふぁんだ?」
牛尾の視線に気がついた遊星がアイスを咥えたまま言った。
かあっと顔が赤くなったのが自分でわかった。
誤魔化すように大きな声を出す。
「・・!食べ物を口に入れたまま喋るな!大体もたもたしてるから溶けるんだろうが!」
遊星は眉をホンの少し寄せて、不満げな表情になった。
アイスキャンディをもう一舐めしてから口を開く。

「やっぱり言うことが年寄り臭い」


牛尾は小憎たらしい糞餓鬼の脳天にまた拳固を食らわしてやった。



END





餓鬼のアイスの食べ方がなんかえろくてぎょっとする牛尾さんでした(笑)
別にチャーシューやるのに意味なんかないんだよ。
意味はこれから気がつくのvみたいな。

なんかパラレルになりつつある牛遊ですが
大会前に日があった、ってことにしておいてください(^^ゞ
ホントはすぐ始まっちゃったカンジだったけど。




2008.09.20

 

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