■「僕のてのひらに降りてきたもの」(剣翔)■

■空色模様の恋模様
僕のてのひらに降りてきたもの(剣翔)


剣翔+吹雪
これの続きっぽい










「剣山くん、剣山くん」
木の影から手招きする、自称恋愛の魔術師、ブリザートプリンスを見つけて剣山は思わず見て見ぬふりをしそうになった。
吹雪は悪い先輩ではもちろん無いのだが、何かと厄介事を運んでくるのだ。
出来たら係わり合いになりたくない。
しかし目が合ってしまった以上、無視するわけにもいかず剣山は言った。
「何ざうるす?」
「実はお願いがあるんだけど」
「お断りするどん」
間髪入れず即効却下する。
吹雪は何処か芝居がかった仕草で、傷ついた、といった表情を作って見せた。
「酷いなぁ。話くらい聞いてくれたっていいじゃないか」
「オレの恐竜さんのDNAが聞くなと言ってるざうるす」
聞いたらまた面倒ごとに巻き込まれるから止めておけと警告している。
吹雪は悪戯っ子のような顔で剣山に顔を寄せて囁いた。
「キミの大好きな翔くんに関する話だよ?」
「だ!大好きなんてそんなことないざうるす!」
不自然に動揺して剣山は叫んだ。
大好きなんて、そんな。
確かにデュエルをして以来、見る目が変わったという自覚はあるが。
「はいはい」
剣山の動揺をさらりと流して吹雪は続ける。
「亮から翔くん宛てにクリスマスプレゼントが届いてるんだよ。それを今日の夜、枕元に翔くんに気がつかれないように置いておいて欲しいんだ。同じラーイエローの剣山くんなら、ボクが行くよりも目立たないし・・お願い出来ないかな?」
「・・嫌、ざうるす」
自分が思うよりもずっと硬い声が出た。
『丸藤亮』の名前を聞くと、最近いつもこうだ。
胸の中が黒いもやで、いっぱいになってしまう感覚。
吹雪は大仰に嘆いてみせる。
「何故だい?キミはサンタを信じる奇跡の高校生を保護したいとは思わないのかい?」
「思わないどん。丸藤先輩もそろそろ現実を見たらいいざうるす」
サンタなんて、居ないのだと。
兄に騙されていたんだと。
そうしてあんな兄のことなど嫌いになってしまえばいい。
ヘルカイザーの強さを褒め称えるテレビをただ眺めていた翔の白い顔。

あんな顔をさせる、男のことなんて。

「わかってないなぁ」
吹雪は人差し指を左右に振って見せた。
「信じるってのは、奇跡なんだよ。奇跡は、奇跡を呼ぶんだ」
「何言ってるか全然わからないどん」
「二人とも何してるっすか?」
後ろから聞こえた声に文字通り剣山は飛び上った。
思わず声が裏返る。
「ま、丸藤先輩!」
「やあ翔くん、サンタさんの噂話をしていたんだよ。ところでその袋、なんだい?」
吹雪は驚いた様子も見せず、にこやかに話を逸らしてみせた。
「あ、これっすか?皆にクリスマスカード作ったんす。ちょうど良かった、吹雪さんにも、はい」
「ありがとう、見ていいかい?」
「どうぞ」
吹雪は受け取ったカードをその場で開いた。
開くとサンタが立ち上がるようになっていて、なかなか可愛らしい。
「翔くんが作ったのかい?素敵だね!」
「丸藤先輩、超ぶきっちょそうなのに、意外に器用ざうるす」
「一言多いっすよ。もう剣山くんにはあげない」
ぷぅと翔は頬を膨らませた。
「そんなこと言わないで、剣山くんにもあげなよ。クリスマスなんだから。これ、とっても素敵だよ」
吹雪が綺麗な笑顔でそう言った。
褒められれば翔も悪い気はしないようで、大人しく頷く。
「・・亮にも、送ったの?」
吹雪に問われて、翔は小さく頷いた。
「きっと喜ぶよ、あいつ」
その言葉に、翔は嬉しそうに笑った。
また胸の中が何か黒いもので埋め尽くされる気がする。
何故だか自分で理由がわからないのが、何より嫌だ。
そっとその場を離れようとした剣山に気がついて、翔がその腕を捕まえた。
「剣山くん」
クリスマスカードを押し付けられる。
「あ、ありがとうざうるす」
「あとコレ」
ポケットから出したものを翔は剣山の手に押し込んだ。
悪戯っ子の顔でにっこり笑う。
「去年プレゼント貰えなかった可哀相な剣山くんに」
「え」
手を開くと、小さな鈴と恐竜さんの付いた根付けが乗っていた。
「くれる、ざうるす?」
「あげるよ、可哀相だからね!」
可哀相を強調して翔はべえと舌を出す。
ちょっと嬉しかったのにそう可哀相可哀相言われては何だか面白くない。
言い返そうと口を開きかけた剣山に、翔は言った。
にこり、と可愛い顔で笑う。
その笑顔に、うっかり見惚れた。

「今年はきっとサンタさんも剣山くんにプレゼントくれるよ。剣山くん、意外にいい奴だしね」

「・・・一言余計だどん」
剣山がそう言うと翔は楽しそうに笑った。
他にもカードを配らなきゃいけないから、また後で、と言って去っていく。
剣山は手の中の根付けに目を落とした。
サンタなんてもう随分前に本当は居ないのだと知っていたけれど。
『奇跡は、奇跡を呼ぶんだ』
吹雪の良く分からない理屈が、なんとなく理解できた気がした。
この奇跡は、こんなに優しい。


今日、小さなサンタに、プレゼントを貰った。


「さっきの話、頼まれてくれるかな?」
「・・任せて欲しいどん」
吹雪の笑顔に、剣山はそう答えた。



END







剣翔+吹雪
吹雪大活躍。
そして自覚する剣山くんなのでした(^−^)
いつか丸藤先輩のサンタになってねv




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恋したくなるお題 (配布)

2008.12.23

 

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