■遊戯と爺ちゃんと敬老の日■

海馬家シリーズ
敬老の日でじいちゃんのところへ来ました。チビちゃん4〜5歳。



海馬家とは

遊戯ちゃんと社長が夫婦で(にょたではないです)
長男は闇様で次男が乃亜王子というパラレルシリーズです。
基本は海表。
詳しくは此処から




武藤遊戯は高校を卒業すると思い切り良く海馬家へ嫁に行きました。
嫁、という表現は世間一般的には正しくないかもしれません。
武藤遊戯という人物は、小柄で細く大きな瞳が印象的な可愛らしい容姿を持ってはいましたがまぎれもなく「男の子」でしたから。
ですが海馬瀬人と武藤遊戯は「恋人同士」でありましたので海馬邸で一緒に暮らしだしたということは結婚したも同然ということでしょう。
男同士ではありましたが。
そうして二人の間に待望の第一子が生まれました。
何度も繰り返しますが二人とも男です。
普通に考えれば子供が出来るわけなどありません。
でもこの場合そんなことは些細なことなのです。
気にしてはいけません。
ここで問題なのはその生まれた男の子が遊戯が<もうひとりのボク>と呼んでいた古代エジプトの王様『アテム』の生まれ変わりだった、ということでした。

 

 

***************

 


 

 


「じいちゃん」
店の奥へ声をかけると双六がひょっこりと顔を出した。
「じいちゃん!」
「よく来たのぅ、<遊戯>」
駆け寄って来た<遊戯>の頭を双六の手が優しく撫でる。
嬉しそうなその様子を戸口のところで見ていた遊戯が声をかけた。
言いながら腕の中の乃亜を抱えなおす。
「じいちゃんに渡すものがあるんでしょう、もう一人のボク」
「おう!」
振り返って元気に返事をした<遊戯>は持っていた布の袋の中から紙を取り出した。
「けいろうのひだから、ぷれぜんと!」
紙いっぱいに双六の顔が描いてある。
幼稚園で描いたらしい。
「おお、よく似てるのう。ありがとうな、<遊戯>」
再び頭の上に降りてきた手に髪の毛をかき回されて、<遊戯>が笑った。


「あいぼう、『けいろう』ってなんだ?」
相変わらず呑気に経営している店の片隅に陣取って、おやつを頬張りながら<遊戯>が訊いた。
『けいろうのひ』と言うのがよくわかってはいなかったらしい。
じいちゃんにプレゼントを上げる日、くらいの認識だったようだ。
「敬老の日っていうのはね、年上の人を敬う日なんだよ」
「うやまう?」
「そう」
何と説明したらわかりやすいだろうか、と遊戯は少し考えた。
「大好きだから、もっともっと一緒に居てね、って改めて言う日・・かな」
「そんなことわざわざいわなくても、おれはじいちゃんがだいすきだぜ!」
「うん、そうだね」
宣言するかのようなその言い方に遊戯は微笑んだ。
「でも、たまにはそれを口に出して言おうね、って日なんだよ」
「ふうん?」
わかったようなわからないような、そんな顔をして<遊戯>は大福の残りを口に押し込む。
「言わなきゃ伝わらない時もあるでしょう?じいちゃんが居てくれて良かったなぁって」
<遊戯>は大きく頷いた。
口の中がいっぱいで声が出せなったらしい。
ようやくすべて飲み込んで冷たいお茶で流し込むと言った。
「じいちゃんがいてくれてよかった」
「うん」
にこり、と遊戯は笑った。
双六は昔から遊戯の良き理解者だった。
<遊戯>のことも話す前から薄々わかっていたようで、それでも何も言わずに見守ってくれていた。
それは今でも変わらない。
有り難いよなぁと遊戯はしみじみ思う。
「そういえば」
思いついたように<遊戯>が言った。
「じいちゃんがいなきゃ、おれはあいぼうにあえなかったかもしれないんだな」
「・・・そうだね」
そもそも双六にパズルを譲り受けた所から、すべて始まったのだ。
「うんめいのであいってやつだな」
「そういうの、何処で覚えてくるのさもう一人のボク」
ませた物言いをする<遊戯>を少し茶化すように遊戯は言った。
運命の出会い。
そうかもしれない。
だけど『運命』なんて言葉では括れないような気がする。
「運命、ってそんな大袈裟な感じじゃなくてさ」
遊戯は少し考えた。
「『縁』ってのが近い、かな」
「えにし?」
遊戯は頷いて続ける。
「ボクとキミとは」
遊戯は自分の胸と<遊戯>の胸を交互に指差して言った。
「目には見えないけれど、確かに繋がってる」



「「見えるけど見えないもの」」



二人の声が重なった。





出会いは確かに
運命とか、偶然とか、
そういうものが重なった結果なのかもしれない。


けれど


最初は細かったその繋がりを
手繰って
引き寄せて
ちょっとやそっとじゃ切れないくらい

太く

強くしたのは


自分たちの力だから

 



***************

 

 

 

 
「夕飯は食べていくんじゃろ?」
奥へ引っ込んでいた双六が顔を出して訊きました。
「ごめん、じいちゃん。今日は海馬くんもモクバくんも早いっていうから帰るよ」
「あいぼうはごはんをつくるんだぜ」
そうか、と言って引っ込んだ双六はしばらくして何やら持って再び顔を出しました。
「じゃあこれをもって帰りなさい」
「わあ、秋刀魚だ」
「さんまさんま!」
覗き込んで<遊戯>も嬉しそうな声を上げます。
「今朝獲れた秋刀魚じゃよ。貰いものじゃが」
「ありがとう」
「またなじいちゃん」
遊戯は魚を受け取ると、乃亜を背中におんぶして、それから<遊戯>と手を繋ぎました。





しっかりと、離さないように。

 




海馬家は今日も平和です。

 

 

 

END

 

 





そして秋刀魚の話に続く(^_^)

 

敬老の日の話なのに
じいちゃん出番少な目でスイマセン(^^ゞ

 

2005.09.19

 

 

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