■染色月■

■十二ヶ月
染色月(そめいろづき)  夏祭り。帯結び。浴衣のお披露目。





海馬家とは

遊戯ちゃんと社長が夫婦で(にょたではないです)
長男は闇様で次男が乃亜王子というパラレルシリーズです。
基本は海表。
詳しくは此処から




武藤遊戯は高校を卒業すると思い切り良く海馬家へ嫁に行きました。
嫁、という表現は世間一般的には正しくないかもしれません。
武藤遊戯という人物は、小柄で細く大きな瞳が印象的な可愛らしい容姿を持ってはいましたがまぎれもなく「男の子」でしたから。
ですが海馬瀬人と武藤遊戯は「恋人同士」でありましたので海馬邸で一緒に暮らしだしたということは結婚したも同然ということでしょう。
男同士ではありましたが。
そうして二人の間に待望の第一子が生まれました。
何度も繰り返しますが二人とも男です。
普通に考えれば子供が出来るわけなどありません。
でもこの場合そんなことは些細なことなのです。
気にしてはいけません。
ここで問題なのはその生まれた男の子が遊戯が<もうひとりのボク>と呼んでいた古代エジプトの王様『アテム』の生まれ変わりだった、ということでした。

 


 

***************


 
「あいぼう、わたがしがたべたい!」
「美味しそうだね、ボクにも少しくれる?」
上手いものだ、と思う。
小さな子供には大きすぎるであろうその菓子を食べ過ぎないようにちゃんと管理している。
いや其処まで考えていないのかもしれない。
ただ自分も食べたいだけで。
どちらにせよ、遊戯大好きな<遊戯>の返答は決まっている。
「もちろんだぜ!」
「ありがとう、ボクのかき氷も少しあげるね!」
賑やかに、楽しそうに。
祭りの露店を覗きながら遊戯と<遊戯>は歩く。
その後を瀬人はゆっくり付いて歩く。
本来ならば此処にモクバと乃亜も居る筈だったのだが、今回は少し出足が遅かったせいで乃亜が寝てしまった。
モクバは自ら留守番を申し出てくれたのである。
本当はモクバも来たかっただろうに。
施設に居た頃、よく親の手を引いて浴衣で通る子供たちを羨ましげに窓から見ていたのを思い出す。
海馬邸に引き取られてからは、一緒に行くことなど敵わなかった。
そういえば。
瀬人は林檎飴の屋台の前で足を止めた。
赤い林檎が飴にコーティングされて如何にも美味しそうだ。
一度、モクバだけがこっそり祭りに出掛け、林檎飴を買ってきてくれたことがある。
「あいぼう、かいばがりんごあめかってる!」
目敏く見つけた<遊戯>が、ズルイオレも!と騒いだ。
「此れは土産だ」
「モクバくんに?」
「ああ」
頷くと、そっか、と遊戯は笑った。
遊戯はモクバから何か聞いて知っているのだな、とすぐにわかった。
モクバがこっそり買ってきてくれた林檎飴。
剛三郎に取り上げられて、勿論、食べられなかった。
「もう一人のボク、乃亜くんにも何かお土産買って帰ろうよ」
「おう!」
元気に返事をして<遊戯>が露店を物色し出す。
小さな乃亜が喜ぶ土産を選ぶのに<遊戯>なりに知恵を絞っているようだ。
「ボク、兄弟居ないから少し羨ましいな」
「そうか」
確かに兄弟がいて良かったと思う。
あくまでも『今は』だ。
大事な弟を疎ましくさえ思った、あの頃のことは正直思い出したくない。
瀬人はもともと過去を悔むより、そんな暇があったら一歩でも先へ進んだ方が建設的だという思考の持ち主だ。
悔んで悔んで下を向いて生きていて何の得があろうか。
過去など切り捨てて進化していった方がいい。
だが、あのころの経験が、記憶が、現在の自分を作り上げているのは確かなのだ。
其れに気付かせてくれたのは隣で笑う遊戯に他ならない。
散々酷いことをしたにもかかわらず、自分を好きだと言ってくれた。
そういう処も全部ひっくるめて海馬くんでしょ、と笑ってくれた。



そうしてずっと側に居てくれる。

遊戯が側に居てくれるのなら、自分は自分のままで、変わっていけるのではないかと思うのだ。





***************




「お面なんかどうかなぁ」
最近乃亜と<遊戯>が気に入っているらしい特撮のヒーローのお面を指して遊戯が言いました。
「いいんじゃないか」
「おれもほしい」
あっちがいいこっちがいいとお面を売る屋台の前で慎重に吟味を始めた2人の後ろで、やれやれ時間がかかりそうだと瀬人は小さく笑いました。



弟に何を土産にしたら喜んでくれるか選ぶ楽しみ、此れも兄弟の居る特権なのでしょう。

 



海馬家は、今日も平和です。












END







海馬家
夏祭り。
実はこれと少し繋がってる。




お題はこちらから
Fortune Fate

 

2011.08.30

 

 

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